2014.07.18

【法令ニュース】会社法の一部を改正する法律の成立

 社外取締役等による株式会社の経営に対する監査等の強化並びに株式会社及びその属する企業集団の運営の一層の適正化等を図るため、会社法の一部を改正する法律(以下「改正法」)が、2014年6月20日第186回国会(常会)の参院本会議で可決、成立し、同月27日に公布されました。施行日は、公布日から1年6ヵ月内の政令指定日とされています(改正法附則1条)。主な改正内容は以下のとおりです。

 

1. 監査等委員会設置会社の新設

(1)  監査等委員会は、取締役である監査等委員3人以上で組織され、その過半数は、社外取締役でなければならない(改正後の会社法(以下「新法」)331条6項)。

(2)  監査等委員である取締役は、株主総会において、それ以外の取締役と区別して選任される(新法329条2項)。

※現行の「委員会設置会社」は、「指名委員会等設置会社」に呼称を変更する。

 

2. 社外取締役及び社外監査役の要件見直し

(1)  親会社の関係者(新法2条15号ハ)、兄弟会社の業務執行者等(新法2条15号ニ)及び株式会社の業務執行者等の近親者(新法2条15号ホ)も社外取締役になることができない。

※改正前は、現在株式会社又は子会社の業務執行者等である者、及び過去に株式会社又は子会社の業務執行者等であった者は、当該株式会社の社外取締役になることができない(改正前の会社法(以下、「現行法」)2条15号)とされており、社外性の要件が厳格化された。

(2)  退職後10年が経過すれば社外取締役になることができる(新法2条15号イ)。

※改正前は、期間制限がなかったが、改正により社外性の要件が緩和された。

 

3. 特別支配株主の株式等売渡請求(キャッシュ・アウト)

総株主の議決権の10分の9以上(定款でこれを上回る割合を定めた場合は、当該割合以上)を保有する株主(特別支配株主)が、株主総会の決議を経ずに、他の株主等に保有株式等のすべての売渡を請求できる株式等売渡請求制度の新設(新法179条~179条の10)。

 

4. 支配株主の異動を伴う募集株式の発行等

(1)  公開会社が、親会社以外に対して募集株式を割り当てることにより、その引受人が総株主の議決権の過半数を有することになる場合(株主割当による場合を除く。)、払込期日の2週間前までに、株主に対し、その引受人の氏名・名称などを通知又は公告しなければならない(新法206条の2)。

※改正前は、第三者割当てによる募集株式の割当ての際、通知・公告の内容として、割当先に関する事項等の開示は要求されていない。

(2)  株主総会決議は原則不要だが、上記の通知・公告から2週間以内に10分の1(定款で引下げ可能)以上の議決権を有する株主が反対する旨を通知した場合、払込期日の前日までに、株主総会決議(普通決議)による承認を受けなければならない。ただし、公開会社の財産の状況が著しく悪化している場合において、当該公開会社の事業の継続のため、緊急の必要があるときは、この限りではない(新法206条の2第4項、5項)。

※改正前は、公開会社は、有利発行に該当しない限り、第三者割当てによる募集株式発行を取締役会決議のみで実施できる。

 

5. 社外取締役を置いていない場合の理由の開示

事業年度の末日において、監査役設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって、その発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならないものとする(新法327条の2)。

※政府は2年後に「社外取締役を置くことの義務付け等」について再検討を行う旨の条項が、改正法附則に盛り込まれている(改正法附則25条)。

※コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会(経済産業省)は、2014年6月30日、社外役員等の導入・活用に際して考慮すべき事項を取りまとめた「社外役員等に関するガイドライン」を公表した(http://www.meti.go.jp/press/2014/06/20140630002/20140630002.html)。

 

6. 会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定

株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任等に関する議案の内容は、監査役(監査役設置会社にあっては、監査役会)が決定する(新法344条)。

※改正前は、監査役(会)設置会社においては、取締役(会)に決定権限があった(現行法344条)。

 

7. 親会社による子会社の株式等の譲渡

親会社が、一定の子会社の株式等を譲渡する場合、その効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議による承認を受けなければならない(新法467条1項2号の2)。

 

8. 会社分割等における債権者の保護

分割会社が承継会社等に承継されない債務の債権者(残存債権者)を害することを知って会社分割をした場合には、残存債権者は、承継会社等に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができるものとする。ただし、吸収分割の場合であって、吸収分割承継会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでないものとする。

※改正前は、承継会社(新設分割における設立会社を含む。)に承継されない債権者には異議権が与えられていなかった(現行法759条参照)。

 

9. 最終完全親会社等の株主による責任追及の訴え(いわゆる多重代表訴訟)

(1)  6か月前(定款により引き下げ可能)から引き続き株式会社の最終完全親会社等の総議決権又は発行済み株式の100分の1以上を有する株主は、その最終完全親会社等の一定の子会社の役員等の責任(特定責任)に係る責任追及等の訴え(特定責任追及の訴え)の提起を、その子会社に対して請求することができる(新法847条の3第1項)。

(2)  上記の請求の日から60日以内に、その子会社が特定責任追及の訴えを提起しないときは、請求を行った株主が、その子会社のために特定責任追及の訴えを提起することができる(新法847条の3第7項)。

※「最終完全親会社等」:対象となる子会社株式を直接又は間接に100%保有し、それより上に親会社が存在しない株式会社(新法847条の3第1項)。

※対象となる子会社は、その株式の帳簿価額が当該最終完全親会社等の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1を超える場合に限定される(新法847条の3第4項)。

 

 その他、株主名簿等の閲覧請求の拒絶事由の見直し、組織再編等の差止請求等に関する改正も行われています。

参考URL 法務省 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00151.html 

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